この学校は、人智学というルドルフ・シュタイナー(1861-1925)のオカルト教義に従う宗教セクトの一つである。閉鎖的な人智学組織には、教育に関する膨大な書籍があるが、手に入る情報のなかに精神的使命を率直に著述しているものはほとんどない。ベテラン父兄でも、教授法を規定する人智学の根本方針や、カリキュラムに浸透している人智学教義をあまり知らないことがある。
2 シュタイナーはオカルト理論に基づいている
この教育は、その主旨が健全な社会に貢献できるかどうか批判的に検証されたことがない。2年間の指導者養成コースは情けないほど不十分である。初年の基礎には人智学のセミナーがあり、主にシュタイナーのオカルト哲学を学び、「いかにして超感覚世界の認識を獲得するか」の著述の通り、秘儀参入の道を進む。教師志願者は、「転生とカルマ」と「オカルト科学」を読まなければならない。
運動が盛んになるにつれ、この宗教運動を外側から評価する必要が高まった結果、一部の人からカルトとみなされるようになった。父兄および運営陣は、この運動の推進者がよく見せかけを装うという点に注意する必要がある。例えば、シュタイナー教育は子供の発育段階に基づいていると言うが、これはシュタイナーの唱える子供の発育段階を指している。それは転生のことであり、カルマであり、エーテル体、アストラル体および自我のことであり、児童医学の専門家による統一見解とは大きく異なる。この教育理論には、首を傾げたくなる慣行がいくつかある。特に読むことを教えるのは子どもに害があると信じており、歯の生え変わりの前にアルファベットを覚えるのもよくないという。また、身体障害児は子供のカルマであると信じている。
まれに、人智学の基礎を公表する指導者もいる。ユージン・シュウオルツは尊敬を受けたシュタイナー学校の校長であり、ニューヨークのスプリング・バレーにあるサンブリッジ・カレッジ養成機関の元責任者である。シュウオルツは1999年11月13日のサンブリッジでの講義で、娘の体験をこう語った。
「私は、娘が毎朝、神について語るのを聞いて喜んでいます。娘をこの学校にやったのはこのためです。娘が宗教的な体験ができるよう、この学校へ入れました。・・・この学校が子供たちに宗教的な体験をさせていることを否定するのは、シュタイナー教育の基礎を否定することです。・・・
我々がほんとうは何をしているのか。父兄に話せば、あまりに唐突に聞こえるだろうと言葉を濁してきましたが、そんなことは終りにする時がきたのです。・・・我々が何者なのかを公言しましょう。皆が学校へやってきたら、このことを知らせましょう。・・・人智学を父兄とともに分かち合うのは、我々の責任です。きっと、父兄は我が子を理解し、我々の神秘的なやり方を推し測ることができるようになるでしょう。そうです。我々が子供達に与えているのは、教室のなかの人智学なのです。我々が意識しているか無意識であるかにかかわらず、人智学は教室のなかにあります。」
シュウオルツは、このコメントのすぐ後で、サンブリッジ養成機関の責任者の職を移動になった。おそらく他の指導者が、ここまでの透明性についてゆけなかったものと思われる。
典型的な例では、我が子が受けている教育について、質問をする父兄を馬鹿にするという態度がよくみられる。ロイ・ウイルキンソンは、シュタイナー教育に60年以上携わった人間である。初めは生徒として、のちに教師や講師や書き手にもなった。
「父兄は、この学校は好きだが、周囲から聞き集めたか教師から聞いてくる「ばかげた」発想とは無縁であったらいいのにと、よく言っている。しかし、この学校と「ばかげた」発想は分かちがたいのである。」(Roy
Wilinson "Spiritual Basis of Steiner Education: The Waldorf School Approach"
Sophia Books, Rudolf Steiner Press 1996)
PLANSは、教師達が教えられたカルマと転生を信じ、その通りに子供達と触れ合っているということを率直に父兄に伝えて欲しいと願っている。カルマと転生を信じている教師のなかには、例えば、ある子供は「間違った」親を選んで生まれてきた、または親の願いに反しても、ある子供はこの学校に「カルマ的に」引き寄せられてきたと考える者もいる。
父兄が知っておくべき事柄には、次のようなものがある。
科学と歴史のカリキュラムは、シュタイナーの解釈である「アカシック・レコード」に基づいている。これによれば、「古代人」には予知能力があり、子供達も、いつの日か人智学の秘儀参入によってこの能力が得られる。
忠実な信奉者は、人類はかつて、失われた大陸アトランテイックに生きており、いつかは金星か木星かバルカン(かつて水星の内側にあったとされた実在しない惑星)に住む日がくると信じている。
教師達は、民族、血統、「四つの気質」について中世の体系を学んでおり、子供達の発達を理解する手立てとしている。
シュタイナーの言った「突飛な」話を教師全員が信じているわけではないが、深く傾倒している教師は多く、(教師の部門会議には、たいていシュタイナーの勉強が含まれている)一般に人智学について父兄とあまり話をしない。
父兄が知っておくべき事柄には、「芸術に根ざした」教育を謳い全体観をもった親を惹きつけておきながら、実際には創造性を歓迎しないという点もある。学校内の芸術活動は、人智学では重要であるシンボルを瞑想するなど、宗教儀式と言った方が的確なものが多い。子供達は教師の書いたことを黒板から写すことに時間をかける。4年生で財布に刺繍するようになると、全員が同じ文様でなければならない。(秘儀参入のシンボルが使われる)
3 公的基金によるシュタイナー教育活動は米国憲法修正第1条に抵触している
アメリカでは、1991年からシュタイナー教育運動が起こり、教員養成ワークショップやシュタイナー系のマグネット・スクール[注1]とチャーター・スクール[注2]が公教育として現れてきた。
この活動には、上記の問題に加えて、政教分離の法を犯しているという問題点がある。人智学の宗教哲学は、この教育から分離することができない。例えば、この学校では私立公立を問わず、シュタイナー史観である「アトランテイス後の亜集団」構想が古代史の骨子となっている。
宗教的な祝祭は、人智学の主要人物を中心に行われる。例えば、ミカエル祭のときには、公立学校でも名前を変えて大天使ミカエルを祝う。ミカエル祭は収穫祭やアドヴェントの庭となる。アドヴェントの庭では、子供達が転生を象徴した渦巻きのなかを歩き、光の庭と呼ばれる。儀式の名前が変わっても、歌や詩、人形劇、劇などにして子供達に伝えられる宗教的意義は変わらない。アメリカの公教育において、人智学を教え広めようとするこうした儀式は政教分離法に抵触する。アメリカ全市民の宗教の自由を保証する法律に反している。
[注1]
マグネット・スクール:都市部から特に芸術科目などにすぐれた生徒を集め高等課程を指導する公立学校
[注2]チャーター・スクール:市民主導による公立学校