一般文書・批判記事 目次へ戻る

シュタイナー流の脅迫     Arno Frank  
ベルリン、ドイツ 2000年8月4日
ドイツ出版物「TAZ」よりCISAR.ORG
英語翻訳

Aug. 4, 2000 Intimidation of the Waldorf kind   Arno Frank
-Racism and the Relationship of Anthoroposophy to Nazi Philosophy
-Articles


 水の中に石を投げれば、さざ波がたつのは当然のことである。Mainz(ARD)の政策雑誌「レポート」が、2000年2月28日の放送で投げた二つの石は、訴訟の大波と抗議の洪水という結果をもたらした。
 
 最初の放送では、シュタイナー学校で起こった反ユダヤ的な事件が広範囲にわたって扱われた。二度目は、「Atrantis und Raetsel der Eiszeitkunst」という本にある人種差別が取り上げられた。この本は、Ernst Uehliという著者の本で、シュタイナー学校の教師が歴史を教えるときには、手元に置くべき一冊である。しかし、この後、家族省(the Federal Family Ministry)から区分申し立てを受けてからは、手元から離れたところに置くようになった。
 
 この本には人種差別表現があった。「現代のニグロは子供のようなもので、模倣段階にある。」また、秘儀も混在していた。「天才の種は、すでにアトランテイスの初期にアーリア民族に蒔かれていた。」
 「レポート」は今までにないコメントで放送を終了した。「脅迫には屈しません。」

“ユダヤのプロパガンダ”
 脅迫がどんなものであったか、「レポート」のチーフ編集者フリッツ・フレイが明かしてくれる。「2月の放送後、自由ヴァルドルフ学校同盟から洪水のように、訴訟や反対事例の放送要求や放送中止要求がきました。彼らはありとあらゆる手段を使って、自分達の要求を実現しようとしました。何百枚ものFaxと編集者への手紙ですよ。」
 
 訴訟や抗議の手紙は、現代の法的に正当な防衛手段である。しかし、中身のほとんどが正当ではなかった。エリック・フリドラーの報告である。編集者が受取った手紙や電話は、「反キリストの生まれ変わり」だから「牢屋に入れ」などであったという。「シュタイナーの転生を信じれば、アトランテイス人の魂はずっと私たちのものなのだ」「ニグロに誰か一人でも、大学を創った者がいるのか」ある母親は、驚くべき究極の論理でこう言った。「私たちは人種差別主義者じゃない。これは、みんなユダヤ人のプロパガンダなのよ!」

 さまざまな反応の質はともかく、量には驚いた。フレイは、型にはまった殆んど同じ反応のなかから、言葉の選択にも調整されたものを感じた。「複数の学校が束になって叫びとなり、嫌がらせをしているという圧力を感じました。」

 実際には、自由ヴァルドルフ学校同盟のホームページ(www.waldorf-schule.de)には、抗議の要請はひとつもでていない。そして、「レポート」との法的争いでの敗北を、勝利としてSWRを販売している。
 反対事例の放送も放送中止も、フランクフルト州裁判所およびシュトットガルト高等裁判所に却下された。ただ学校をやめていくユダヤ人の父母が「増えている」という事実は、裁判所の一時差し止めによって繰り返さないということになった。SWRは上訴した。

 SWRには、法的争いにかかる莫大な費用をまかなえる資金が充分あるのであろう。しかし、オーストリア人のアンジェリカ・ウアルサーのような個人事業の調査ジャーナリストでは、そうはいかない。彼女は、クリスチャン系の保守派週刊誌「Die Furche」に批判記事を書いた。「Die Furcheが今まで経験したことのない抗議の嵐でした。私は訴訟だといって脅されたし、私の書いたものには事実を曲げたものがたくさんあると迫られました。」その後、事件は「和解」した。とても上手くいったと彼らは言う。グラッツ・シュタイナー学校で予備聴聞会を行ったのだとウアルサーと上司は伝えた。このジャーナリストは、背に腹はかえられなかったのである。「あの人たちを調べるには、重圧に耐えられなくてはだめです。」

 オーストリア・テレビのプロデユーサー兼ジャーナリストのペトラス・ファン・デル・ラットは、重圧に耐えられる男である。国家社会主義を扱った5連続放送の番組で、「救世主」を取り上げたとき、ルドルフ・シュタイナーの果たした役割のほか、人智学の救済には秘儀をもつオカルトの徴候があることに触れた。続くライブ討論では、このテーマが活発な論争を呼んだ。そして、そのすぐ後には、いつもの迷惑レターがファン・デル・ラットのところに雨あられと降り注いだ。

 シュタイナー学校のグループ・アソシエーション理事Raoul Kneuckerは、討論の最中にはこの番組を「よくできたポストモダンのコラージュである」と言ったのだが、4週間後の1996年12月には、欧州会議書記長の前で「その番組推進に反対」を唱え、さらには、その理由が「客観性の原則に対するひどい冒涜」であると言った。

“私設諜報機関”
 心理学者で出版人でもあるコリン・ゴルドナーも同じような体験をしている。ゴルドナーは集中的な抗議レター運動をしなければならなかった。雑誌シュピーゲルで、ルドルフ・シュタイナーの作品にある人種差別表現を指摘をしたため、法的手段や一時差し止めを要求する手紙のほか、口頭での嫌がらせ、中傷などで脅迫を受けた。ゴルドナーの社会的信用を傷つけるため、「私が20年前に書いたものまで掘り起こしてきました。」このことで、人智学のなかには反対意見を持つジャーナリストの調査ファイルがあることが明らかになった。「人智学の人間はたいしたネットワークをもっていますよ。批評家の調査にかけては、私設諜報機関さながらのものがあることは明白です。こうした考え方の違う人間の扱い方が、ちょうど統一主義のカルトと類似しています」

 現在MDRテレビの編集者をしているアーノルド・セウルは、雑誌Faktでヴァルドルフ学校の「風変わりなしつけ方」を調査した。(1996年9月9日Mytos Waldorfpaedagogik)Seulが言うには「放送協会の委員会のようなものが関わっていて、放送前から、WestdeutschenからSaarlaendishen放送のデイレクターに手紙がきました。私は番組制作を続けましたが、人智学の人の吹き込みはもらえなくなりました。その代わり山のような不満の手紙を受け取りました。」

 これで落ち着くだろうと思っていたプレゼンテーションのとき、セウルは自分が「30、40人の前で裁きの場につれてこられた」ことを悟る。全員が圧倒してきた。「私はイエロー(扇情的)・ジャーナリズムはしません」セウルは興奮した人智学の人たちをなだめた。結局この言葉はその後、父兄に送るニュース・レターに告白として取り上げられた。ただし「私はイエロー・ジャーナリズムをします。」となっていた。

 「普通こういうことは、サイエントロジー(人間の精神の浄化と向上をはかり、世界の平和と幸福をめざす新興宗教 L ロナルド・ハバード1991-86が創設した)を扱う人しか体験しませんがね」セウルは、人智学の人たちのこの特別な敏感さには、二つの説明が考えられると言う。ひとつは、自由ヴァルドルフ学校同盟の実際の経済は逼迫しているのではないかと言う。「ドイツ民主共和党がひっくり返ってから、シュタイナー学校はフリー・サポーター学校として進展しています。それに諸手をあげて歓迎されています。今大きな数字を扱っているのは、どんな種類のお金が含まれているのかわかっている人間ですよ。」しかし、カルトのような組織に補助金がふさわしいかどうか、補助金の心配をすれば迫害はマイナスになるだろう。「もうひとつは、彼らはあまりに世間離れしていて批判にどう対処していいか分からないのでしょう。メデイア文化との経験がないのです。」

 これとは対照的に、ステファン・リーバは経験とジャーナリストに対する柔軟な理解をもつ人智学の人間である。彼はジャーナリストを見ると犬を思い出すと言う。「自分の臭いを残して歩き、臭いから臭いへと鼻をくんくんさせている犬です。犬は跡をついて歩き、糞尿臭を放ち、バラやバイオレットには興味がありません。嗅ぎまわる癖と自分自身の排泄物とは、内面でつながりがあります。」Flensburg (1998年63/IV)リーバは自由ヴァルドルフ学校同盟の理事を務め、シュトットガルトのフリー・ハイ・スクールでヴァルドルフ・アカデミックスの講師も務めている。

ページトップへ